皆さんは"植物の香り"と聞くと、花をイメージされる方が多いのではないでしょうか。確かに花は植物を代表する器官であり、印象的な色や形をしています。ですが、植物が発する香りは花だけでなく、葉でも感じることができます。ここでは、都市部で身近に感じられる植物の葉の香りを5種ご紹介します。
ドクダミ
Houttuynia cordata 🌿 香り:ハーブのような清潔感と野生感のある青臭さ
ドクダミは、日本全国に広く分布する身近な植物です。商業ビルの隅や壁沿い、路地裏など、私たちの生活圏のあらゆる場所に生えるため、見たことのある方も多いのではないでしょうか。ドクダミ最大の特徴は、葉の匂いです。葉を触った手の匂いを嗅ぐと、独特の香りを楽しむことができます。
ハーブとして利用されるドクダミ。乾燥させた「十薬(じゅうやく)」は古くから民間薬として用いられてきた
ドクダミは、葉を乾燥させた「十薬(じゅうやく)」という漢方として、解毒や消炎などの民間薬として古くから使われてきました。名前の由来は「毒を矯(ただ)める=毒を止める」という意味から、「どくため」→「どくだめ」→「どくだみ」と変化したと言われています。
2023年の朝ドラ「らんまん」にも登場したドクダミ。独特の香りで敬遠されがちな植物が"生命力の象徴"として輝いた
市販のお茶の原材料にも使われるほど、実は体に良い植物。日陰のじめじめした場所を好み、梅雨の時期に白い花を咲かせます。一度根付くと旺盛に広がるため、庭ではなかなか手強い存在ですが、その生命力の強さが薬効とも関係しています。
キュウリグサ
Trigonotis peduncularis 🥒 香り:葉を揉むとキュウリそのものの香り
直径わずか3mm程度の可愛らしい青い花。歩道や公園のすみに群生する春の雑草
キュウリグサは、最大でも高さ20cm程度の春に咲く雑草です。花の大きさは3mm程度とひかえめですが、歩道や駐車場の脇、建物のすきまなど身近な場所でよく見かけます。葉を揉むとキュウリそのものの香りがするため、この名前がつきました。
よく似た花・ノハラムラサキとの比較。見分けのポイントは葉の香りと花の形
「カッパの好きな野菜がキュウリ」という伝承から、この草の近くには水辺があるとも言われていたとか。春の散歩で葉を一枚摘んで香りを確かめてみてください。名前を知ってから探すと、意外とあちこちで見つかります。
ヘクソカズラ
Paederia foetida 💨 香り:刺激的な強烈な匂い(でも薬効あり!)
ベルのような形で縁がピンク色の可愛らしい花。風鈴のようにそっと揺れる姿は思わず足を止めて見たくなるほど
ヘクソカズラ(屁糞蔓)の名前の由来は、葉や実を揉むとただよう独特なニオイを放つためです。つるを伸ばしてフェンスや植え込みに絡みつく身近なつる植物で、夏から秋にかけてベルのような可愛らしい花を咲かせます。
強烈な香りの原因成分には、抗菌・抗炎症・鎮痛作用が報告されており、古くから民間薬として「おでき」「虫刺され」「吹き出物」に用いられてきました。ヘクソカズラは"名前で損しているけど中身はスゴい"代表格の植物です。
カツラ
Cercidiphyllum japonicum 🍬 香り:キャラメル・焼いた砂糖のような甘い香り
手のひらサイズの丸いハート型の葉が特徴。秋に黄色く色づき落葉するとき、甘い香りを放つ
カツラは、秋の訪れとともにいち早く葉が黄色く色づき、道路や公園を明るく彩る樹木のひとつです。街中でよく見かけるサクラやケヤキ、モミジよりも先に紅葉することから、"紅葉界のトップランナー"とも言えます。
黄色く紅葉し、葉が地面に落ちて色が変わる過程で香り成分「マルトール」が増え、「キャラメル」や「焼いた砂糖」「綿あめ」のような香りを放ちます。このマルトールは実際にお菓子の香料にも使われている成分です。歩いていて「どこからあま〜い香り?」と感じたら、近くにカツラの木があるかもしれません。落葉が少し積もった場所に立ち止まると、香りがよりはっきりとわかります。
クスノキ
Cinnamomum camphora ❄️ 香り:スーッとした清涼感(樟脳)
大きな公園や神社、学校の校庭などに多く見られるクスノキの大木。常緑樹のため年中濃い緑の姿を見ることができる
クスノキは、大きな公園や神社、学校の校庭などでよく植えられる、とても身近な樹木です。常緑樹のため、季節を問わず濃い緑の姿を見ることができます。全国には樹齢数百〜千年を超える巨木も多く、神社や寺院の境内では"御神木"として大切にされてきました。
クスノキから得られる「樟脳(しょうのう)」は防虫材として長年活用されてきた
クスノキの葉を触るだけでスーッとした清涼感のある香りが立ちます。この香りの正体は「樟脳(しょうのう)」という成分で、長年にわたって防虫材として活用されてきました。昔はタンスの中にクスノキを入れて着物を虫食いから守っていました。兵庫県・熊本県・佐賀県・鹿児島県では県のシンボル「県木」にも指定されています。
名前を知らなくても、香りで気づける植物があります。目だけでなく鼻を使って散歩してみると、新しい発見があるかもしれません。「あ、この香りはキュウリグサだ」「甘い香りはカツラだ」と気づく瞬間は、自然との距離がぐっと縮まる体験です。